手話の歴史と神奈川県の現状 戦後間もない昭和22年、戦中の中断を経て、名前を新たにした全日本ろうあ連盟が群馬県伊香保で結成され、翌年には第1回ろうあ大会が京都で開催された。 大会は、全国からろうあ者が集まって、手話でコミュニケーションが取れる楽しみの場となり、日頃の問題を話し合い、さらには交流を深める、貴重な場となっていった。 平成24年には大会も60回を数え、ふたたび京都で開かれたこの大会には、過去最多の5,000人以上が参加する、記念大会となった。さらに、翌平成25年も記念の年となる。 鳥取県で、手話を言語として真正面から位置付ける、全国初の手話言語条例が施行された。 平成26年12月、神奈川県議会にて「神奈川県手話言語条例」案が全会一致で可決・成立し、平成27年4月1日から施行された。これにあわせて同月には、「手話普及推進協議会」のもと、5ケ年計画を立案した。この中では、手話の普及を先ずは県の職員からはじめ、市、区の職員に下してくる計画である。また計画立案と同時に、病院に手話通訳を設置するように要望した。 手話とは 手話は「あいうえお…」の五十音、または「ABCD・・・」のアルファベットをあらわす指文字と、「花」「咲く」「美しい」などの名詞、動詞、形容詞などの単語が基本である。手話は世界共通ではなく、日本手話(Japanese Sign Language, JSL)のほか、アメリカの ASL、イギリスのBSL、フランスのLSFなどのように原則的に各国で異なる。 また、コミュニケーションの手段は指文字のほか、空文字*1、身振り、筆談、口話*2など、なんでもアリとのこと。 *1 空文字(そらもじ):空中に人さし指で文字を書いて伝える *2 口話(こうわ):音声言語を発音し、口の形から意味を読み取る 日頃の活動 以前は幸区の手話サークル「太陽の会」に通っていたが、遠くて大変なので1984年11月に「手話サークル 槇の会」を立ち上げ、カトリック百合ケ丘教会で活動をはじめた。活動時間は毎回2時間であるが、会をはじめるにあたって、先ずは最近参加した会議の報告や催しものの紹介などを手話で30分ほど行なう。各自が立って手話で報告するが、実際にあったことを、正しく伝える緊張感があって、話す方にも、聞く方にも、良い練習になる。話し手、聞き手のレベルに差があるので、手話通訳が中に入って理解をうながす。 手話の学習は初級と中・上級にわかれる。聴覚障害の方が講師をつとめ、手話通訳がつくので初心者でも安心だ。 取材した日は、初級者は食べ物の表現を学んだ。講師が用意した模造紙には、いろいろな食べ物の名前が書いてあった。その中から似通ったものを選び、どのように表現するか問いただすが、初心者には難しいようだ。講師は、「もりそば」と「ざるそば」、「アイスクリーム」と「ソフトクリーム」など、まぎらわしい言葉を、微妙なニュアンスの違いまで手話で伝えていく。「寿司」や「天ぷら」「ラーメン」などを表す意外な技法には、「ナーンダ。これでいいの!」とドット歓声があがる。 中・上級者は会話の練習をした。手話の単語の表現だけでなく、表情や視線、身体の動かし方も大切とのこと。会話の練習は、講師が用意したパネルを参考におこなった。パネルには、パソコンとメール、インターネットの使い勝手や有効性についての2人の会話の例文を、手話で、一人二役で表した。会話の中にはパソコンの専門用語が多いので、手話の知識もかなりのものと感じた。 教室を離れての活動として、聴覚障害者と健聴者の交流会を開催する。また、福祉学習の総合学習の一環で、社会福祉協議会経由で依頼があると、麻生区内の小中学校へ手話教室の指導にでかける。 会が終われば近くのファミリーレストランなどで昼食をとるほか、忘年会、新年会を開いたり、催し物の見学にもでかける。気のおけない仲間が集まる、和気あいあいのサークルである。 「聴覚障害の方が普段困ること、または不自由なことはなにですか?」という問いには、「コミュニケーションがとれないこと。車のクラクションが聞こえないこと。」という答えがかえってきた。会の最大の抱負は、誰でも手話ができる社会の実現とのこと。 興味のある方は是非一度のぞいてみてほしい。 健聴者でも、最近流行のハイブリッドカーは、音もなく近づくので特に怖い! |
約120人の関係者が、県議会での可決・成立を傍聴した (神奈川県聴覚障害者協会ニュースより) 五十音の指文字の一例 活動場所(カトリック百合ケ丘教会) 次ぎ次ぎとさされるので、気がぬけない (初級クラス) 手話の技法を駆使して、自分の考えを伝えていく (中、上級クラス) ファミレスでの、なごやかなひととき |
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2019-04-19 | |
手話サークル 槇の会 代 表:能登勝(のとまさる) 連絡先:Tel.044-955-3422 設 立:1984年11月 会員数:34名(男性4名、女性30名) (聴覚障害者3名含) 会 費:3000円/年 活動日:月曜10時~12時 活動場所:川崎市北部リハビリテーションセンター |
取材・文 中島久幸 |