琴平神社は、古く室町時代、元亀元年(1570年)に神明社として建立された。その後、江戸時代、文政9年(1826年)に、四国金刀比羅宮の祭神を迎えて合社し、武州柿生琴平神社となった。 2007年に焼失した天井画が、2011年に本殿とともに現宮司の志村幸男氏の筆で復元。希望者に公開され、訪れた人の目を奪っている。焼失した絵は、画風と筆の運びから、江戸時代後期の著名な文人画家、渡辺崋山(1793~1841年)の作と伝えられている。崋山の日記に登場し、会合を通じて親交のあった、先祖の依頼で描かれたと思われる。 天井画は、多くの幸運が重なって復元された。まずは、先代の宮司がプロに依頼して、焼失する前にしっかりした写真を残していたこと。つぎに、現宮司の幸男氏が「何が何でも復元する」という情熱を持っていたこと。そして同氏に、日本の伝統的な技法や写実を追求する「白日会」(注)で活躍する、秀でた画才があったことである。原画は杉板の上に直に描かれた日本画であったが、復元画は保存性からキャンパスに油絵具で描かれた。一辺53cm、7行9列の絵は、本殿の天井にピッタリはまっている。中央に配した龍のみが、古来神秘的で架空の生物で、ほかは全て実在の動植物である点に、崋山の宗教的な思いを感じる。 天井画は希望すれば見学できる。要予約(電話.琴平神社社務所044-988-0045) (注)白日会:大正12年(1923年)発足の美術研究団体。 日展(1946年~)より古くから展覧会を開催 |
天井画(復元画、部分) 頭上に広がる絵の見事なでき栄えに息をのむ ツル(原画の写真) 奇抜なポーズに崋山の非凡さがうかがえる ツル(復元された絵) 絵は全て金色の下塗りの上に描かれた |
2014--02-01 | |
琴平神社(天井画) 所在地:麻生区王禅寺東5-46-15 駐車場:70台 アクセス:徒歩では小田急線柿生駅南口から約30分 東急バス.柿生駅前バス停2番乗場 たまプラーザ駅行または すすき野団地行で「琴平下」下車 URL:http://www.kotohirajinja.com/ |
取材・文 中島久幸 |